上条集落は、山梨県を代表する民家形式のひとつである茅葺切妻造主屋がひな壇状に並び、養蚕の隆盛をいまに伝えています。
江戸時代中期から昭和にかけて建てられた地域独特の突き上げ屋根の形式をもつ民家や蚕室がまとまって保存され、周囲の畑地や自然環境と一体となり、江戸時代以来の伝統的な集落の形態をとどめる「甲州市塩山下小田原上条」は、国がその価値を認め「重要伝統的建造物群保存地区」として選定しました。
一つの集落内で伝統的な茅葺きの「切妻民家」がまとまって保存されている例は稀で、地域住民の方により守られるその景観は四季折々の風景とともに私たちの目を楽しませてくれます。
そんな上条集落で、周囲の畑地や自然環境と一体となった集落の魅力を体感できる恒例のイベントが先日開催されました。
まず目にとびこんでくるのは、散策の起点としてお借りできる福蔵院の駐車場に並ぶテント!
地元有志が集まり農業体験を中心に精力的に活動している「上条を活性化する会」が主催する「野菜販売会」です。
地元の新鮮採れたてのきゅうりやピーマン、玉ねぎなどが販売されていました。
今回は甲州市の文化財担当が案内する「上条集落見学会」に同行させてもらいました。
金剛山福蔵院では、金山衆が信仰した不動明王立像(平安末期)が祀られています。
ここでは住職から直々にお話をうかがい、天井絵や木喰百道による百体仏も間近で見学させていただきました。
楽しそうにじゃがいもの収穫体験をしている「上条農園」の脇を通り「金井加里神社(かないかりじんじゃ)」へと一行は進みます。
「金が埋けてある」のが名前の由来との説もある神社ですが、本殿は県の、随身門は市の重要文化財となっています。
古道を進むと、往時の上条集落の風景をそのまま体感できる印象的なビューポイントに!
屋根は萱の上にトタンが葺かれているものが多いですが、配置や屋根の形も昔の写真と一緒で、伝統的な主屋や蚕室が多く残されているのがわかります。
馬蹄形に家屋が並ぶ集落に囲まれた「観音堂」には、木喰白道によって作られた「木造百観音像」が祀られています。
サクラ材一木造りの子安観音像で、光背には背面に至るまでくまなく菩薩像が彫り込んであり圧巻です。
観音堂はふだんは閉まっていますので、イベント時は見学のチャンスですね!
次は、11月上旬の「大根収穫祭」を予定しています。
「上条集落見学会」はこのようなコースで案内してもらいましたが、個人で訪れても大丈夫。
案内板があり、ゆっくり見てまわって約一時間の散策コースが設けられています。
突き上げ屋根をもった民家、石垣、道祖神、六地蔵など集落全体を楽しみながら散策されてはいかがでしょうか。
他にも、田舎暮らしの宿泊体験施設「もしもしの家」や、この秋のオープンを目指すカフェなど、新たな過ごし方にも注目です!